『セカイ系』
主人公の少年とヒロインの少女の小さな恋愛関係が、社会や国家といった中間領域を挟むことなく、直接的に世界の危機や終末といった大きな運命に直結する物語。
『新世紀エヴァンゲリオン』が原点とされ、『天気の子』のように「きみとぼく」の関係性と終末世界。
天気の子の物語では異常気象によって雨が降り続き水没していく世界の危機、ヒロインの命を犠牲にして世界を救うか、世界を犠牲にしてヒロインを救うかという選択を迫られる。
『セカイ系』と呼ばれるジャンルはバブル崩壊後の不況や、1995年の震災、事件、そして「1999年人類滅亡説」といった社会不安が、クリエイターの表現に大きな影響を与えた時代に生まれ、その熱は2000代前半まで続いた。
今作はこの「セカイ系」と呼ばれた作品の空気感が好きな作者の個人製作作品をざっくり紹介していく。
・1999年の東京を舞台にした短編SFビジュアルノベル。
・ジャンル:【ビジュアルノベル】
・発売日:【2026年8月28日】
・開発:『OUTDATED NOVISE』
・対応ハード:STEAM
◇ストーリーや世界観
主人公はごくごく普通の高校2年生。
主人公の『 月待 』は目覚めると放課後のいつもの教室だった。1999年、世界は終末論で持ち切り。
「世界が終わるなんてバカげてる。生きてる限り世界は続くし、生きている限り宿題を渡される。」
帰ろうとしたその時、扉越しに映る人影に見覚えがあり驚く。見覚えがあるのに誰なのかわからない。
追いかけるとそこは屋上。彼女が振り向き、目が合う。「…また会えたね」。
日常に潜む確かな違和感を元に世界の秘密と自分の運命と向き合い、その選択を見守る短編SFビジュアルノベル。

◇ゲーム内容&主要人物紹介
全編キャラクターボイスは無し。
選択肢は無く基本的に読み進めるタイプのノベルゲーム。

・???
このセカイの事をよく知っていそうな、物語のカギとなる謎の少女。

・椋木(むくのき)
同じ高校の1年。一緒にセカイの謎に迫る頼もしい相棒。
◎注目ポイント
短文の連続。テンポの良い会話劇
2行以上の説明的な長文はそれほど多くなく、会話も簡潔なため卓球のラリーのようにテンポ良くマウスをクリックして読み進められる。




物語進行も「真相を探るパート」と「日常パート」がシームレスに訪れて良い緩急に。物語の全体像を探りつつキャラクターの個性も垣間見れる。
主要人物も主人公を含め4人ほどで物語が渋滞することなく高速道路をびゅーん!と進む勢いでエンディングまで走り抜ける。
舞台は1999年。オカルト的な恐怖と現実的な不安が渦巻く時代。
本作の物語の舞台は1999年。
現実世界では1999年7月に人類が滅亡するという説『ノストラダムスの大予言』や西暦が「99」から「00」に変わる際、コンピューターが誤作動を起こして社会インフラが崩壊すると言われていた『2000年問題』が存在した。
一方は杞憂に終わり、一方は人々の努力と対策によって何事も無かったが、この頃の時代の空気感はどこか、与えられた虚像に対し多くの人々が認知する事で実体になっていく感覚があった。
テレビでは心霊番組や未確認生物を追う番組など、平和的な日常に潜む見えない物を見せ、その存在を確立させていくような。
その物が実際にあるか無いかの議論もまたその存在を形作っていく。得体を知れない。知りたくても知れない時代。
現代では恐怖の対象が創作物からヒトコワと呼ばれる人間自身が恐怖の象徴になっていたりするんですけどね。でも地震雷火事親父は今はもう昔のハナシなのかも?

この平成の空気感を纏った作品を令和になって触れる事が出来る事に感謝。
▢クリアタイム目安
クリア時間は約2時間50分ほど。
私自身読むのが遅く、テキストを読むと眠くなってしまうの体質なので何度か意識を失ってこのタイム。
◎総評
選択肢の無い一方通行型のシナリオでボリューム感も約2~3時間ほどのコンパクトな作品のため、お話のテンポ感が良くダレる事無く読み進められた。
終盤、設定に関して驚きの事実が発覚するポイントのテキストの感じやお話の流れなどは良かった。しかしとある人物の心を解放するシーンは3回ほど読んでもなぜこれで解放されたのかが良く分からなかった。これは私の読解レベルと感受性の低さが原因なのだろうか…
キャラクターは絵をドット絵風に加工したような見た目でこのキャラクターはAI生成された物のように感じた。場面が変わると作画が微妙に変わったり、印象的な1枚絵では目の色が変わっていたりとよく見てしまうと気になる点が出てくる。
演出面はサブリミナル風の演出が不安を煽り、目的が定かではない存在にうっすらと恐怖を感じて全体的な雰囲気が良かった。BGMも場面に合っていて印象にこそ残らないものの邪魔にならない演出感。
ゲーム性のある他のゲームと比べるとボリューム的に値段は少し高く感じるが、私がトレーラー映像を見て「記憶を失った主人公、終末世界、1999年という社会不安が多かった時代が舞台であり、1999年でありながらスマホを持っているというSF的要素、そして世界の終わりを感じさせる夕日と少女の姿と共に流れるBGMにノスタルジック要素も感じたから」で。
その期待にお金を払ったと言っても過言ではない。
実際にこの作品に触れて『セカイ系』について調べたり、ビジュアルノベルゲームに選択肢が無くても良いのか、それはゲームと呼べるのかの議論を読んだり、1990年代に思いを馳せたりと、ゲーム外にも影響を与え時間を消費したと言う意味では私にとっては良いゲームでした。


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